研究内容

星と星との間の宇宙空間は全く何もない空間ではなく,様々な物質が希薄ながら存在している.そのなかで密度の濃いところは,星の光を遮る意味で雲と呼ばれ,電波望遠鏡などで観測され,100種以上の分子の存在が確認されている.そのような雲から太陽のような恒星が生まれると考えられている.その雲の状態,物質の存在形態,起こっている化学反応は興味ある問題であり,分子のスペクトルを利用して調べることができる.
星間物質の研究は宇宙における物質の存在形態,変遷を理解し,地球上の物質,生命体の起源を明らかにすることを目的とする.これまでの電波領域での代表的な天体での広い周波数範囲のスペクトル線サーベイ観測により,どのような分子種がどの程度存在しているかがわかってきた.また,ある分子種がどのような分布をしているか観測的に調べられ,なぜそのような分布を示すかが分子の生成,消滅過程から推論されている.

実際の研究テーマ(2003年)


  1. フーリエ変換型赤外分光
    分子イオンやフリーラジカルなどの短寿命分子の振動回転線、または電子遷移を赤外領域で観測し、その分子構造を決める基礎的な研究である。最近、岡山大学で独自に開発した装置で、時間分解分光(分解能 1 μsec)が可能になった。図1はその例で、アルゴンと水素ガス混合物を20 μsec の間の放電したときの赤外発光の時間変化を示している。放電中に含まれる様々な分子が反応または脱励起により生成、減衰していく様子が振動・回転準位毎に、一度の測定でわかるようになった。

  2. ミリ波・サブミリ波分光
    宇宙からの電波スペクトルには依然多くの正体不明のスペクトル線が残っていて、帰属をつけるためには、実験室で再現する必要がある。そのために100-400 GHz領域で様々な候補分子の吸収スペクトルの測定を行っている。対象はこれまで測定データが少ない金属化合物を主にしている。

  3. 星間分子の反応実験
    星間空間における化学反応の中で、イオンと電子の再結合反応の速度と分岐比の決定は総合的な反応過程の理解のために重要になっている。HCNH+が電子と反応してHCNとHNCを生成する場合の分岐比を決定する実験を準備している。
  4. 赤外アレイ検出器を用いた分光装置製作
    高感度赤外発光を検出するために、InSb(256x256)のアレイ検出器を用いた冷却型分光器の製作を行っている。
  5. Diffuse Interstellar Bands(DIBs) の解明と岡山天体物理観測所での低密度雲の観測
    可視・紫外領域には、60年以上にわたって、正体が不明のスペクトル線が報告されている(DIBs)。実験室での追求とともに、望遠鏡での観測により、天体毎の分布の違いからキャリアーの予測を行っている。

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